日本が先進国の中でも、住宅寿命が短いことを知っていますか?少し前までは「家を建てたら一人前」的な風潮もあり、家の中身よりもとにかく建てることが優先でした。
そして、昨年の国土交通省の報告では、住宅・土地統計調査(総務省)により、空き家の総数はこの20年で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加しているとのことです。
住宅寿命の国際比較
国名 | 滅失した日本の住宅の平均築年数 | 既存住宅の流通シェア |
イギリス | 73.2年 | 91.4% |
アメリカ | 55.9年 | 79.3% |
日本 | 38.2年 | 14.5% |
上記のデータ自体はここ20年くらい、大きな数字の上下がなく出されているものです。日本はここ数年で、少し(3年くらい)住宅寿命が伸びました。30年〜35年で住宅ローンを借りることが主流の日本では、世界の中での住宅寿命の短さはちょっと見過ごせない数字です。
また、日本だけ新築住宅の数が、住宅市場における既存(中古)住宅の流通の数を上回っています。各国の住宅施策にはもちろん歴史や取り組みの違いがあるわけですが、「日本では新築じゃないと資産価値がない」という状況です。
日本でも欧米でも資産価値は住宅そのものではなく、立地条件に重きを置かれることがほとんどです。しかし、欧米では住宅は投資の一つだというマインドが日本よりも高く、手に入れた住宅をメンテナンスしながら価値を守り、2世代、3世代と住み継ぐということも定着しています。
子どもに残せる家になってる?
これは住み手側だけでなく、家づくりに携わる人と共有しておきたい理念でもあります。家づくりの方法について詳しいことは建築士や職人さんなどのプロに任せて、住宅ローンが返し終わっても住めると思える家を建てたいと思いませんか?
家に価値を持たせるって何を重視して、どれくらいコストがかかるのかは素人では全然分からない範疇です。だから、自分なりの基準を持つために、家づくりに関して勉強しなくてはいけないのだと思います。
これまで出会った自然素材の家づくりをされてきた注文住宅のオーナーたちに聞いていると、最短でも1年半くらいの時間は掛かっています。2〜3年以上は要している人が多く、1年ちょっとで計画して建てて引っ越しにまで至った、となるとかなりハイペースなケースです。
予算設定などの目標は必要ですが、価値ある家づくりにするためにも、早めのプランづくりで余裕を持って臨むことをお勧めします。
家づくりが実質的に始まる工事の契約〜引越しまでは、一般的に10ヶ月〜1年前後くらいが目安となります。
ちなみに自然素材で家を建てる・リフォームする依頼先は、設計事務所もしくは地域工務店に依頼することがほとんどです。良い建築業者に出会えるように色んなところを見て回ることも大事ですし、ハウスメーカーや分譲業者では自然素材はほとんど採用しません。
家づくりのパートナーを決めるというよりは出会うまでに、数年かかってしまう人もいます。その出会うまでの時間を活用して、自分たちのライフプランも含めて、色々な夢を膨らませていきましょう。
自分たちが何を優先するのかを先に決めれば、たとえ希望が全部取り入れられなくても納得できると思います。
メンテナンスをして住み続ける
欧米では中古住宅の市場が活発な理由として「自分たちでできるメンテナンスはする」という意識を持っているということも大きいです。
ホームセンターに行けば内装を仕上げるものはほとんど手に入る環境ですし、自ずと自分でも扱うことのできる建材を選ぶのでしょう。私も小さい頃は父親がビニールクロスや障子を張り替えたり、ちょっとした棚や木で作れる様なおもちゃは作ってくれた記憶があります。
でも、家のメンテナンスって大変なんじゃ…?
ビニールクロスは15年くらいまで、サイディングの外壁は10年経つ前には一度業者さんのチェックをしてもらうのが目安です。
以下は、私の家の中にある自然素材のメンテナンスの目安です。
壁1(スイス漆喰) | 既に子どもがガンガン角に物をぶつけるので、剥がれたところは何度か同じ材料でタッチアップをしている。 15年くらいして汚れが気になるようなら、塗料タイプのもので上塗りする。 |
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壁2(水性自然塗料) | 洗面所に使ってドキドキしたが、汚れが付いて少しの水で拭く分には色落ちなどもない。 10〜15年くらいして汚れが気になるようなら、ローラーで同じものを上塗りする。 |
床(無垢フローリング) | ドイツ・リボス社の自然塗料オイルが塗られているので、普段の汚れ落としは同じメーカーのワックスクリーナーを使う。 3〜5年して再度オイルを塗った。頻度は場所と樹種による。 |
キッチン(無垢材+大理石) | 天板は大理石なので酸を避ければ、かなり丈夫。 無垢部分は気になる時に、固く絞った布で拭く程度。 |
木製サッシ | 外側は色がしっかり付くリボス社のタヤを採用し、5〜7年位のもちを想定している。 内側はお風呂の窓以外は後で塗ろうと無塗装のままだったが、5年して一部塗ったところも。 |
他にも無垢の家具や建具がありますが、床やキッチンよりも汚れていないので乾拭きだけ行い、5年経ってもまだオイルの再塗装などは行なっていません。
家の外にもメンテナンスが必要なものとして、
・外壁のスイス漆喰(15年位で塗料タイプのものを上塗り)
・ウッドデッキ(見た目は大丈夫そうだが、2年位で寿命を伸ばすために自分で再塗装を予定)
・木製サイディング(ウッドデッキと同様)などがあります。
入居後3年くらいまで、1階に使っている柔らかいパイン材の無垢フローリングと、壁の漆喰以外は目立った傷も汚れもありませんでした。
むしろ今のキレイな状態を維持するために、少しずつ木部のオイル塗装の部分を塗り直しています。いっぺんに全部やろうと思わなければ、数年に1度の頻度で自分たちで維持できそうです。
木や漆喰を使った家の良さは、時間を経ることで質感を増していく経年変化の美しさにもあります。家がどんどん古くなっていっても、手入れされた素材は自然な姿のままでより深みを感じられます。
日本でも世界でも長い歴史を持つ伝統建築には、必ず木や石や漆喰などが使われていることが多いです。
耐震性や工法など長持ちさせる要素はプロ側の経験値にもよりますが、仕上げ材料については自然素材も長持ちする家にとても適している建材になりえるのです。
そして、木や漆喰のような自然素材であってもそうでなくとも、家の外壁は適切に軒を出して、なるべく風雨が直接当たらないようにしたいものです。四角い家で屋根も平たく軒の出がなかったり、屋根がない広いバルコニーなどは短い周期のメンテナンスを必要とします。
昔からある家は、降雨量が多く高温多湿な日本の気候に合わせて適切なデザインと素材の選択を行っており、メンテナンスをしながら何十年以上も住まわれているので、家づくりのとても良いお手本です。