自然塗料とは、天然の素材を主原料としてつくられた塗料です。
せっかく無垢フローリングや木の家具を使って自然素材の家づくりをしたなら、仕上げの塗料にもこだわって快適な居心地を実現したいところです。
自然塗料は、ひとや環境にやさしいことだけではありません。
内容成分の安全性以前に「木に適している塗料は何なのか?」ということもとても肝心な要素なのです。
無垢の木の特性を守る
まず、無垢のフローリングや家具の特性を生かしながら長持ちさせたいのなら、塗膜を作らない=合成樹脂が含まれていない=木の調湿性が保たれる塗料が最適です。
無垢の木は室内の湿気が多い時は吸収し、乾燥している時にその湿気を放湿してくれる自然の調湿素材です。
せっかく使う無垢材をウレタンに代表される様な合成樹脂の被膜を作って閉じ込めてしまうことで、その自然の調湿材としての機能は失われてしまいます。
無垢の木を長持ちさせる
無垢のフローリングや家具はいったん塗膜を作ってしまうと、その塗膜が傷ついたり剥げてしまったりした時に、プロでないと修復させることが難しいです。
それは、ウレタン塗装などを素人で行うことが難しいからです。
ほとんどの家では床の塗装が傷んで劣化してしまうことで、再塗装はせずにフローリングそのものを入れ替えてしまうという選択肢になりがちです。
無垢の木を塗膜で覆うことなく木の呼吸性はそのままに、においや安全性を気にせず塗ることができるのが自然塗料です。
無垢の木が適切な手入れをすれば50年、100年と持つことは、多くの伝統建築が手入れしながら現存することで証明しています。
また外に木を貼っているとペンキの様な塗りつぶしのタイプのものが、雨風にも強いというイメージは、確かにその通りです。
しかし、せっかくの木目が消えてしまうだけでなく、ペンキの様に完全に被膜を作ってしまいます。
その被膜を作った状態を維持するために、こまめに塗装を繰り返さなければいけません。
ペンキは木の呼吸性を完全に抑え込んでいるので、どこか一点でも塗膜に傷が入って水が侵入したりすると大変だからです。
水分を含んで木が反ったり水分が出て行くところがなく中に溜まり、木そのものが腐ってしまいます。
塗料の安全性を考慮する
自然塗料に植物オイルを主成分としているものは多いですが、オイル仕上げ=自然塗料ではありません。
日本では、自然塗料の定義が明確に定められていません。
健康リスクが高く使用制限を受けているトルエンやキシレンなどが使われていなかったり、逆に植物のオイルが少しでも含まれているだけで、「天然系」「水性」「エコ」と表示して安全性をうたう商品も多いのです。
自分でネットやホームセンターで塗料などを購入する際は、情報公開の多いものの方が安全です。
自然塗料であっても人によって反応するかもしれないので、肌の露出を避け、手袋やマスクなど必要なものを揃えた方が安心です。
水性塗料を使う時でも、実際の職人さんはとても注意深く防御しています。
塗料に使われる化合物の中には、空気として体内に取り込むだけでなく、皮膚から浸透する有害な化学物質もあります。
より純粋で安全性の高いものを求めるなら、ドイツの自然塗料は成分が公開されているものが多くオススメです。
私は亜麻仁油が主成分である、ドイツのリボス自然塗料(輸入元では自然健康塗料と表示)を自分の家に使っています。
亜麻仁油は亜麻の種子から採れるオイルで、木に浸透することで内面から木そのものを堅くする性質があります。
その亜麻仁油の性質が生かされて、昔から船のデッキの塗装に用いられたりしてきました。
リボス社では原料となる亜麻の花を有機栽培で行なっていたり、溶剤(シンナー)にはお薬や化粧品に使用される食品レベルでの安全性を実現しています。
他にもドイツ本国で使用原材料と成分表示(情報公開)の点で評価の高い、アウロ社やクライデツァイト社(日本名:プラネットカラー)、ビオファ社などが日本に入ってきています。
日本で高い市場シェアを誇るドイツの木材保護塗料といえばオスモカラーもありますが、成分表示は多くありません。
純度の高い自然塗料は、比較検討して分からなくなるほどのブランド数はありません。
もし比較して分からなくなったら、そのブランドの思いやその会社が他に扱っているものは何なのかを見てみるもの良いかもしれません。
また、塗料成分を完全公開していることの他に、自然素材ならではの色彩の良さもポイントとなってくるでしょう。
私が家に採用したリボス社の自然塗料の前身は、子どもたちが使う、有機溶剤の入っていないクレヨンや絵の具を作る教材メーカーでした。
創業時からアントロポゾフィー(人智学)の理念を持って、「自然と調和して共生する」ものづくりがされてきました。
アントロポゾフィーは、ヨーロッパで19世紀末〜現代かけて支持される思想です。
「シュタイナー教育」などの教育や芸術、農業から医療の分野など様々な分野で取り入れられています。
ドイツやスイスなどでアントロポゾフィーの理念でものづくりをしている会社は数多くあり、日本に入ってきているものだとヴェレダ社(オーガニックコスメ)も有名です。
木の家や家具をメンテナンスをして使い続ける
ドイツなどのヨーロッパで自然塗料が選ばれるのは、自分たちで家や家具を手入れして住み続けるという背景もあります。
皆がエコロジー商品を使うというわけではありませんし、自然塗料の成分や安全性の他、使い勝手が良いというのもポイントになるかと思います。
実際に私が使用しているリボス自然塗料は、かなりさらっとしたオイルで自然塗料の中でも技術は不要で塗りやすいものになります。
細かい部分にはハケなども使いますが、床などにはもう使わなくなった肌着やタオルでワックスやオイルを塗り込むだけです。
暮らしてから傷が入ったり汚れが染み込んだものは、ペーパーを当てて同じオイルを塗り込みます。
固く絞った布で落ちない様な汚れは、専用のワックスクリーナー(グラノス)を使って汚れを落とします。
無垢材の大きな凹みはまだありませんが、できたら濡れタオルを当てながらアイロンを押し当てることで、ある程度回復するというのも織り込み済みです。
もしこれがUVやウレタン塗装だったら、表面的に劣化が進んで傷ができた時に、素人では直すことが難しいと思います。
自然塗料を使う際に気をつけたいこと
塗膜で覆って木を保護するニスやペンキなどと違い、木に塗料成分を浸透させることで木自体を強くする塗料がほとんどです。
室内で使う際には塗りすぎに注意して、商品説明に従って塗った後に、木に浸透しなかった余分な油分は拭き取る様にしましょう。
自然塗料は引火点が低く、塗った刷毛や布をそのまま放置すると自然発火する恐れがあります。
作業を中断する時は容器の中に一緒に入れて密閉して冷暗所に保管するか、次の日まで作業をしない場合は水に十分浸して乾燥しないように密閉できる容器に入れて廃棄しましょう。
*塗装した木が、発火することはありません。
人への健康リスクがある化学物質を含みながらも、低公害や無公害を売り物にしたりする自称「自然塗料」は多いです。
特に室内に使う際には換気を十分に行い、アレルギーの心配がある人は成分表示を見ながら商品を選んで下さいね。
【ご自分で塗る方へ】
・自然塗料に限らずですが、塗装作業は晴れた日に行いましょう。
・自然塗料は一般的な塗料と比べて乾燥時間が掛かります。
・湿度が高かったり気温が低い日に行うと、湿気や乾燥不良で木にちゃんと塗料が密着しません。
・作業時間だけでなく乾燥時間も、温度が低かったりする冬場の夜間などに掛かることは好ましくありません。
・塗装は段取りが全てです。6畳の居室を1部屋塗るだけでも、結構疲れます。
余裕を持った日程で、できれば誰かに手伝ってもらったりしながら塗り進めましょう。
・上記の自然発火のトラブルを避けるためにも作業時に水を張った容器を用意し、使い終わったボロ切れやハケなどをすぐに入れられる様にしておくと便利です。
防水性と静電気防止効果の両方を発揮します。