



日本の住宅では、壁紙にビニールクロスが90%以上採用されています。
それに対してドイツでは、再生紙やウッドチップなどをリサイクルした壁紙のシェアが80%以上です。
実は世界の先進国の中で、これほどまでビニールクロスのシェアが高いのは日本だけ。
ビニールクロスは見た目のバリエーションも多く、安価で施工しやすい点で日本では圧倒的なシェアを誇りますが、反面、素材の劣化スピードが早く呼吸性もないのでカビなどの原因にもなりやすいものです。
また、化学物質を多く含んでおり、ドイツでは医療施設などへの採用が制限されています。
壁紙(クロス)の種類
下記の表は、上から順番に日本での採用率が高い壁紙の種類になります。
塩化ビニル樹脂系壁紙 | いわゆるビニールクロス。塩化ビニル樹脂に可塑剤を含む。 |
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プラスチック系壁紙 | 塩化ビニル樹脂以外のプラスチックが主素材。 |
紙壁紙 | オガファーザー・ラウファーザー壁紙など、紙が主素材。 |
その他 | 織物・ガラス繊維・珪藻土などの無機質系・木質系など。 |
圧倒的に使われているビニールクロスの健康・環境リスクを減らすために、家づくりで「オレフィン壁紙」というカテゴリーが勧められることがあります。
それは上から2番目のプラスチック系壁紙にあたります。
オレフィン壁紙はVOC(揮発性有機化合物)の発生がビニールクロスに比べて少ないという「エコ」で、通気性などは求められません。
ビニールクロスはなるべく避けたい!
合成樹脂系を除いた壁紙の中で一番よく採用されるのは、紙壁紙です。
紙壁紙には和紙みたいなものの他に、塗装することで仕上げるものがあります。
ビニールクロスを貼りたくない人には、オガファーザー・ルナファーザーなどのウッドチップ壁紙を、建築業者さんから紹介されることがあります。
ドイツから来ているものがほとんどで、大半は1890年代から120年以上の歴史があるメーカーのものです。
日本でも住宅に限らず、美術館や庁舎、幼稚園や保育園などの公共の場で、40年以上前より施工実績があります。
それではウッドチップ壁紙とビニールクロスを比較した際の、メリット・デメリットを見てみましょう。
ウッドチップ壁紙Q&A
以上が代表的な3つの質問ですが、例えば子どもが小さくて落書きや汚してしまっても、いずれ自然塗料で塗りつぶせます。
また、以前よりはだいぶ減ってきたのですが、建築業者さんや職人さんによっては貼りたがらないところもあります。
それは最初から継ぎ目部分が分かりやすかったり、汚れが染み込みやすく水拭きできないことが、オーナーからのクレームになることを恐れるからです。
しかし、それはコストダウンのためにメーカーが推奨していない「無塗装」で貼る時に起こりやすいことです。
実際に私は無塗装で15年くらい暮らしていましたが、台所付近での油はねなどによる汚れと湿気のこもりやすかった脱衣所の口開きなどが徐々に気になりました。
しかしその解決方法としては、自然塗料を上から塗るだけです。
実際に上から漆喰調の塗料を塗り重ねてメンテナンスし、数十年以上続けているレストランやホテルはドイツの至るところにあります。
他にも自然塗料を再塗装するだけで見た目も新しくなるので、日本でも賃貸住宅に使われることがあります。
ウッドチップ壁紙は日本ではまだなじみが薄い「塗装用下地壁紙」ですが、手入れすることで何十年も長く使うことができる壁材です。
ビニールクロスとの体感による圧倒的な差は、「紙とウッドチップに包まれている安心感」といったら分かりやすいでしょうか。
ビニールクロスに比べて室内の湿気を感じにくく、静電気が発生しにくいため壁に直接ホコリを寄せつけません。ホコリを寄せつけにくいことは、カビやアレルギーの原因になるハウスダストが起こりにくいというメリットもあります。
また、下記のページでもバウビオロギーという言葉を簡単に紹介しましたが、「住まいは第三の皮膚である」という考え方があります。
壁が圧倒的な面積を占める家づくりでは、「ビニールに包まれた暮らし」と「自然由来の物に包まれた暮らし」では感覚が変わってきます。
そして多くの時間を過ごす家だからこそ目には見えにくい、VOC(揮発性化学物質)による健康への影響をどうか見逃さないよう、快適に暮らすための選択肢の1つとして紙壁紙の存在が広まればとてもうれしいです。
ちなみに、ウッドチップのテクスチャーが好みでない場合は、無地や別の模様のオガファーザーもあります。→オガファーザー・オフィシャルサイト