森林環境税を払わなければいけない?

2024年から「森林環境税」が導入され、住民税に1人当り1,000円/年が上乗せされるのはご存知ですか?

え!? 初耳です!

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森林環境税って、なに?

平成31年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」
(平成三十一年法律第三号)が成立・公布されました。

本税は、温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備等に必要な財源を安定的に確保する観点から、国民一人一人が等しく負担を分かち合って森林を支える仕組みとして創設されたものです。

引用:林野庁HP・森林環境税及び森林環境贈与税より

自然素材の家づくりには必須の素材である、木材。

木材は最も古い建築材料であり、エネルギー源であり、薬用植物です。

日本は、国土に占める森林面積が3分の2以上で、世界で有数の森林国になります。

国内の森林面積の約4割は人工林で、それは雨や雪の水を保水して災害を食い止め、おいしい水をつくることに寄与しています。

また、燃料や建築材料にして経済的価値が見込めるということで、特に戦後に成長の早いスギやヒノキなどの針葉樹を中心に盛んに植栽がされました。

しかし、その後何十年もかかることなく、燃料は石油へのエネルギーに転換され、家づくりは近代化(ローコスト化)することになりました。

木材の輸入量も多く、自給率を高めるための国策を打ち続けていますが、木材価格は数十年も据え置きになりました。

林業従事者は減り続け、管理されず放置された森林が増えています。

戦後に植えられたスギやヒノキは、もう成熟しているのに燃料や建材としての需要がなくなり、数十年前にはほとんど認知されていなかった「花粉症」という問題も生み出しました。

今、花粉症にかかっている人は国民の3割程度いて、花粉の飛散量が少ないスギとの植え替えを林野庁が対策として出すほどです(林野庁HP:森林・林業とスギ・ヒノキ花粉に関するQ&A)。

ハゲ山にしてしまうと洪水やきれいな水が飲めないなどの弊害もあり、伐採することが花粉を減らす解決策とはなりません。

人が手入れして育てていかなければならない森林ですが、年々所有者や境界の分からない森林の増加や、林業の後継者不足も課題になっています。

そして、パリ協定で決定された温室効果ガス排出削減目標の達成のための手段としても、森林の役割は大きいです。

パリ協定はこれ以上地球温暖化を促進させる温室効果ガスの排出を増やさず、世界の平均気温を産業革命以前より低い基準で保とう、という国際的な枠組みです。

温室効果ガスを排出する主要国間で具体的な削減数値目標を持ち、森林は温室効果ガスを吸収する機能を求められてもいます。

自然的な条件が悪く、なかなか採算ベースに乗せることができない森林事業を、市町村自らが管理できるように移行するため、地方財源を安定的に確保する観点から「森林環境税」は創設されることとなりました。

今の日本の森林が、国民ひとりひとりで平等に負担して、未来のための維持管理をしなければならない状況だということです。

なんだか年金問題みたいな「どうして前の時代の人たちの負の遺産を…」という話にならない様にしたいものです。

世界の森林経営は進んでいる

2019年秋頃から2020年にかけてオーストラリアで大規模な森林火災が起き、地球温暖化や過剰な森林伐採などが被害拡大の一因となったことを、多くの人が知ることになりました。

global warming

世界では天然の森林面積が減って行く一方で、人工林の面積は拡大しています。

2015年現在で、世界では天然林が93%。人工林が7%です。

天然林の面積の減少は南アメリカとアフリカで顕著な一方、続いてアジア、北中米、欧州やオセアニアにおいては、ほぼ安定して推移してきました。

欧州やオセアニアにおいては、「持続可能な森林経営」が導入されていることが大きく、フィンランドやドイツでは、森林教育が子どもたちの教育カリキュラムにも組み込まれています。

オーストリアやドイツで持続可能な森林経営をしている専門家に話を聞きましたが、100年後位までどれくらいの木材需給バランスがあるかを分析し、後世に自然遺産を残していくプランを持っていました。

なぜか?

それは森林の果たす保水や生物多様性の維持などの環境保全の面以外に、化石エネルギー問題に対するバイオマスエネルギーとしての活用などがあります。

また、地元の木を建築資材として使い地域で消費することで、経済的な便益を生むという森林の価値が重んじられているからです。

ヨーロッパの中では何かと日本との比較対象として挙がるドイツでは、森林面積が日本の4割しかありません。

しかし、林業GDPは全GDPにおける5%を占めており、日本の林業GDP(2,479億円/2019年・農林水産省統計)の約7倍とされています。

世界的な成功例として森林率が日本より高いフィンランドをはじめ、北欧やドイツ・オーストリアでは大型機械を使った合理的な林業展開や、木材を住宅だけでなく公共施設にも使える様な部材の生産も活発化しています。

日本では2024年に森林環境税が導入されることで、およそ600億円の財源が全国の地方自治体に人口比率で配分されることとなります。

林業先進国での取り組みにならい、森林を地域資源として消費し国内経済に結び付ける取り組みが徐々に増えていますが、根本的な解決には少し時間がかかりそうです。

国民ひとりひとりが負担する森林環境税が活用されて、身近な森や林が再生されるのを確認できるのはいつになるのでしょう。

人口が少ない、多いでの分配比率は国税として致し方ないところもあるのでしょうが、人口が多い=広い森林面積を抱える自治体ではない、という点も気になるところです。
統計資料:林野庁>統計情報>都道府県別森林率・人工林率(2017年3月31日現在)

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