



家の基本性能を高めて快適に過ごす
自然素材で家を建てるというとローテクな家で、夏も冬も自然に任せて過ごすイメージを持たれているかもしれません。
最近の家づくりではエネルギー問題や健康問題を背景に、国の施策も住宅の基本性能を高める=気密や断熱を良くすることにテーマを置いています。
また、家といっても土地の価値に重点が置かれている日本では、長い間「家はいずれ価値がなくなってしまう」ということを前提とした家づくりに流れていました。
ユニークなデザインや斬新な設備など諸外国にはない多様性があるのですが、定期的な費用を掛けて家を手入れしながら、同じ家で長く住むことへの理解は進んでいません。
長く住める家は将来的に非効率なエネルギーを消費したり、解体した時に1軒で大量の産業廃棄物を出すことはありません。
そして、人生100年時代に突入した現代では、1世代で何度か大掛かりなリフォームをしないと住み続けられない家は、将来の不安要素になりかねません。
高気密だからこそ自然素材
自然素材は構造に使う木材などを除けば、壁や床などの仕上げ部分に多く用いられますが、高気密高断熱の家でこそ使って欲しいものになります。
その理由の1つは、気密が高まった家で設備だけの力に頼らず、室内の空気をきれいに保つことです。
2つ目の理由は、せっかく耐久性のある躯体を持つ家に、メンテナンスしながら長く住み続けられる素材を使うことで、その家の寿命を延ばすからです。
家の気密や断熱を高めることで、エネルギー効率が良く、耐久性のある家づくりに近づきます。
日本の家づくりでは長い間、家の中は夏は暑くて冬が寒いのは仕方がないこととされてきました。
欧米と違って法律で最低室温が定められていない日本の家づくりでは、家の基本性能はほどほどにちょっとした暖房設備をフル稼働させて、冬をしのぐという慣習になってしまっています。
近年では寒さが健康に影響を与える「低温リスク」や室内での熱中症によるリスクにも、ようやく関心が集まってきました。
参考: 省 エ ネ リ フォ ー ム を 実 施 し た 居 住 者 の 健 康 へ の 影 響 を 調 査
(調査:国土交通省 スマートウェルネス住宅等推進調査事業)
実際に、家の中が少し寒かったり部屋ごとに大きな温度差があったりしても、我慢する人は多いようです。
健康・省エネルギーの観点からも、住宅設備の見た目の進化だけでなく、家の基本性能を高めて、住み心地にこだわる家にしたいものです。
床暖房は必要か?






床暖房を設置する時の初期費用や、上がっていく一方の光熱費と、長期的なメンテナンスコストのことも考えなければなりません。
新築で床暖房に使える費用があるならば、気密を高める木製サッシや樹脂サッシなどに使ってエネルギー効率を高める、という方が維持費の上でも合理的でしょう。
床暖房のメリット・デメリットを整理してみました。
住宅の話ではありませんが、保育園や幼稚園を専門とする建築家の方と話したことを思い出しました。
幼稚園や保育園の改修の際には、床暖房を付けると補助金が出るケースがあります。
他の改修事例などでその補助金を使ったことがある建築業者も勧めたり、事業者の方も床暖房を付けるのが当然の流れで、仕様に入れることが定期的にあるそうです。
その建築家の方は床暖房の費用があるなら、直接肌に触れても冷気が伝わりにくい、少し厚めの杉の無垢フローリングの使用を勧めたいという方でした。
子どもたちにとって、木目や素材の感覚が身近に感じられて、室内の湿度もある程度調整してくれるし、足触りもいいし、という心境から出たお話でした。
子どもたちを厳しい環境に置く必要は決してありませんし、電気カーペットや電気毛布などの様な電磁波の強い暖房器具よりは、床暖房の方が断然お勧めなのですが。
また、「あるけど使わなくなった。」という話も時々聞きます。
もし採用を迷うようであれば近隣の人に必要性を聞いてみて、判断しても良いものかもしれません。
心地よいと感じる体感温度









室内における体感温度は、上記の2つの温度に依存しています。
冬に心地よいと感じる時は、周囲の壁面温度が室内の空気温度よりも高く、身体が熱を生産しなくても冷えることがない時です。
その部屋の壁の気密が低かったり断熱が効いてないことで、周囲の壁面温度が低い時は、室内の空気温度を上げて、身体から熱が失われないように調整しなければなりません。
また、人間の身体は不均一な熱放射を不快に感じるので、向かい合う壁面や窓面の温度は5〜10℃の範囲を超えるべきでないとしています。
床と天井の温度差も2〜5℃の範囲を超えないよう、気密や断熱に配慮して窓や仕上げ材にも注意しなければなりません。
無垢の木でも種類によって体感温度は違う
体感温度という点では、無垢の木は熱伝導率が低い=熱を伝えにくい素材です。
木は内部に多くの空気を溜め込んでおり、他のフローリング素材よりも温かみを感じることができます。
夏も然り、気温が上がっても熱を伝えにくいという利点があります。
また、木の種類によっても、熱伝導率(熱の伝えやすさ)は変わります。
一般的にナラ材やウォルナット材などの硬い広葉樹より、スギ材やパイン材の様な柔らかい針葉樹の方が熱伝導率は低く、より温かみを感じられます。
インテリアとして見た目で使い分けても良いですし、建てる建築業者さんの勧められる無垢材の中で検討するのも良いです。
無垢材を重用する建築業者さんだと、思わぬ掘り出し物を持っていることもあります。
というのも、木はいつも同じ種類のものが、豊富にあるわけではないのです。
国産材は輸入材ほどの価格上昇はありませんが、新興国での需要が高まってかなり値上がりしています。
インテリアの流行りと同じで、木の種類にも流行りがあります。
特に近年は中国に限らず、東南アジアの経済成長は目覚ましく、良い材の入荷状態が一定ではありません。
ちなみにわが家ではLDKには堅くて、木目のおとなしい広葉樹であるカバ材を使いました。
そして子供部屋と親の部屋にはより足触りが良く針葉樹である、節ありのパイン材をフローリングとして使いました。
伐採から輸送エネルギーのことや、その土地にあったものでということを踏まえて、日本の木材も検討しました。
しかし、心の声に正直に、自然林で育った樹齢の長いもので、見た目にも気に入った輸入材を使いました。
その代わりになるわけではありませんが、構造材と外壁材は国産のものを使用しています。
せっかくの無垢フローリングを使うからには、塗装も重要です。
塗装の種類によっても体感温度が変わるほか、見た目もメンテナンス性も異なってしまうからです。
無垢材の表面加工を正しくすることで調湿性を失わず、静電気をほとんど帯びず、木が持つ表面の温かみも発揮されます。
家づくりで気密・断熱・素材の組み合わせをきっちり確認しながら進めることで「寒くない」健康で耐久性のある家づくりに結び付いていきます。