無垢材の家に合うシンプルなキッチンが欲しいのですが、なかなか見つかりません。もしオーダーキッチンにしたら、高くつくのでしょうか?
いいえ、そうとも限りません。注文住宅なら大工さんや職人さんに頼んで、キッチンも予算に合わせてつくることができますよ。
無垢材でつくるキッチンのコスト
いろんなメーカーから出ているキッチンを見て、自分の好みをブランドに合わせたり、不要な機能を無くしたいと思うことも。ただ、自分好みの造り付けのキッチン(造作・オーダーキッチン)はコストが高くつくと思われがちです。
造り付けのキッチンは、システムキッチンと同様、どんな素材で作ってどんな機能を付けるのかで、数十万〜数百万円の結構幅広い価格帯になります。
しかし、注文住宅を手がける設計事務所や地域工務店では、大工さんや家具職人さんと一緒に予算ありきで、造り付けでキッチンを造ることは珍しくありません。
実際に、パティシエをしていた友人がシステムキッチンの中で好みと予算が合うものがなく、大工さんと相談しながらステンレスと木を合わせてキッチンを作りました。
設計事務所に依頼して注文住宅を建てましたが、建築中に自分の好みを理解してくれた大工さんが悩む友人を見て、予算内で彼女の好みを優先し自分たちでできるキッチンの提案をしてくれたのです。
キッチンに自分なりのこだわりを持っていた彼女も、自分のオリジナルのキッチンを見た目も使い勝手もとても気に入って使っています。しかも大工さんに作ってもらったことで、システムキッチンに比べてもかなりリーズナブルに作ることができました。
もちろん、オーダーメイドのキッチンブランドやメーカーで作ることは、ブランドだからこそのデザインやコーディネート料などが掛かって当たり前です。
しかし、注文住宅を手がける工務店さんや設計事務所に頼むのなら、設計段階で提案してもらえることも。「ある中から選ぶ」という選択肢しかないと思っていると、そこで迷って止まってしまう人は多いのかもしれません。
注文住宅では家具や建具を選ぶ時にどこか数%でも妥協が必要かもと思ったら、建売住宅やハウスメーカーで規格や仕様が決まっている建築業者ではない場合は「買うのではなく造る」という可能性も探ってみましょう。
キッチンのレイアウト
キッチンのスタイルは、大別すると2通りです。
・対面キッチン
・壁付けキッチン
対面キッチンは、オープンな空間でコミュニケーションを取りながらの台所作業が可能です。
壁付けキッチンは、スペースを有効活用し料理にも集中でき、ちょっと散らかっていても見えにくいです。
以前マンションに住んでいた時には、壁付けキッチンの真後ろに半円形のカウンターが付いていたので、家族や友人と料理をしながら会話も食事も楽しめました。
そのキッチンのスタイルはダイニングセット要らずで、14畳のLDKのスペースを有効活用できました。晩ご飯の用意に追われている時などは効率良く、人が来ても同時にあれこれできるのも気に入っていました。今はペニンシュラ(半島)型の対面キッチンの形式を取って、スペースは少し取りますが準備も食事もより楽しめる空間になりました。
キッチンの種類
アイランドキッチン | 壁に接しておらずオープンなため動きやすい。全て丸見え。 |
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ペニンシュラキッチン | キッチンの左右のどちらかが壁についている。まぁまぁ見える。 |
I型キッチン | コンロからシンクまで一列に配置される。普及しているタイプ。 |
L型キッチン | L字型で作業効率は良い。広いスペースが必要。 |
セパレートキッチン | シンクとコンロを別々の台に設置。分担作業が行いやすい。 |
キッチンはそこに主に立つ人の好きなスタイルと、ダイニングやキッチンの広さを考慮することになるでしょう。また、付けたい機能によっても選ぶものは変わってきます。
家ではほとんど料理をしないという人もいますし、システムキッチンに場所を取られず、機能優先で選んでシンプルでコンパクトに収めるのも一つです。アイランドやペニンシュラは、来客とコミュニケーションを取りやすいですが手元も全て見えます。
素材と耐久性
キッチンに無垢の木を使うのは、はっ水や汚れの面は大丈夫なんでしょうか?
天板に無垢の木を使うのでなければ、お手入れ面で困ることは少ないです。
自然素材でこだわると、例えばキッチンのカウンタートップは無垢材や大理石・御影石などの選択肢になります。
キッチン本体を無垢材で作ろうとしている方は、はっ水や汚れの面でカビなどを心配されるでしょう。
まず、水を吸い込むと弱くなる合板や集成材に比べると、無垢材の方が耐久性はあります。次に、塗装の種類によって水弾きや汚れに対する表面強度は変わります。無垢のフローリング材などと同様に、樹種と塗装の選択で耐久性とメンテナンス方法は変わってきます。
では、どんな人が無垢材のキッチンを使っているのでしょうか?
・無垢材が好き・本物の素材感が欲しい
・欲しい機能が決まっていてそれ以外は要らない
・耐久性があって飽きのこないデザインがいい
・インテリアにあまりツルピカのものを入れたくない
「多少の傷やシミはあまり気にしない」といっても、新築時はやっぱり気になるものです。キッチンの天板に無垢材を使うのは日々のきっちりとしたメンテナンスが必要なので、私は選択しませんでした。
天板も無垢の木にしてみたい人は、お手入れのしやすい自然塗料の重ね塗りによるオイル塗装も検討してください。オイル塗装を選択すると、多少のシミなどが使用当初から気になまたの。一方、ウレタン塗装は一定期間の表面的な強度は手に入れられますが、経年で劣化し一部の塗膜が剥げたり傷がついた時に水が侵入し、一気に木が腐る可能性が高いです。
でも、そんなに無垢のキッチンって汚れやすいのでしょうか?
無垢のキッチンを使ってみて
私は残念ながらキレイ好きとは、少し距離のある人間です。わが家のキッチンを平日にほぼ朝晩と毎日使用して5年、引き出しなどの本体は月に1度拭くかどうかですが、実際に傷や目立ったシミは今のところありません。
キッチンはメープルの無垢材を使っていて(引き出しの底板は合板ですが)、仕上げはリボス自然塗料のクノスクリアという塗料を塗っています。
また天板は天然大理石なので、酸性のものはシミになりやすいです。
気を付けていても所々何が原因か分からないシミがありますが、そもそも模様のある大理石なのであまり気になっていません。
同じ仕様で20年使っている建築士さんの家のキッチンがまだまだキレイで、無垢の色が程よく深みを増し劣化もほとんどしていない状態を見て、このキッチンのスタイルにすることを決めました。
強度が硬い木(メープル材)に亜麻仁油由来の自然塗料で仕上げることで、日常的な水や汚れなどには対応できているようです。起こりえる可能性として他の無垢の家具同様に、知らない間に付いていた水や汚れが長時間放置されていたとしたら、ちょっとダメージになる染み込んだ汚れになる可能性は高いです。
汚れに関しては、軽いものなら水拭きか無垢材の専用クリーナーで。浸透した汚れや浅い傷は研磨してオイルを再塗装することで、簡単に修復することができます。
造作キッチンだからできること
造作キッチンの良さは、空間に統一感が出て他のインテリアとも馴染むことです。キッチンの周りの造作家具も、全て同じ樹種で吊り戸棚や食器棚を作ることで、見た目のきれいさや機能性があり使い勝手の良いキッチンになります。
コストを抑えるために、キッチンそのものの素材にこだわらず、代わりに安価でシンプルなシステムキッチンを取り入れる方法もあります。その場合はツルッとした見た目の樹脂系の引き出しなどをできるだけ見えないように配置し、外側を無垢材やタイルなどの壁で囲んでしまいます。
家具を選ぶ時にいつも課題になる「気に入ったものになかなか会えない」
→「気に入ったら高価で手が出ない」
→「だから当面使えそうなものを設置して済ましてしまう」
となる前に、造作キッチンの可能性も探ってみて下さい。
私にとっては寝室の次に滞在時間の長いキッチンは、限られたスペースですが動線が良く、音楽をかけたり好きな動画を見ながら楽しめる空間になりました。オプションを選んでいくと高価になってしまうシステムキッチンと、好きなものしか使っていないわが家の造作キッチンは、遜色ないコストでできています。
キッチン自体の素材やシステムにこだわるより、コストを抑えてキッチン全体の満足度を上げる選択肢も忘れないでください。コンロやシンクが一列に配置されるI型のシンプルでお手軽なシステムキッチンを選んで、周りにタイルや無垢のパネルできっちり作り込むことで、システムキッチンとはまた違うオリジナル空間に仕上げることができます。