外壁に木を張る時に知っておきたいこと

外部に木を張ったら、すぐにボロボロになりませんか?

木のことを理解して張ると、とても長持ちしますよ。

私は実際に、日当たりの良い南面と西面の一部にカラマツの塗装済み木製サイディングを張りました。

色々な建物を見てきて分かったつもりだったのに、実際に張る段階で耐久性に少し不安になったりもしました。2年くらい経過し、日当たりの良い南側は少し色褪せを感じますが西面は大きな変化はなく、手が届く範囲が多いのでそのうち自分で塗り直そうと考えています。

(*2023年10月追記:約5年経過。色褪せをすごく感じることはないのですが、今後のために一度塗っておいた方が良いのではと思っています。)

木を外壁に張る時に気を付けたい基本的なことは3つあります。

①軒をなるべく出す
②外壁に向いている木材を使う
③木と相性の良い塗料を選ぶ

木が家のデザインに美しさやあたたかみを加えるのはもちろん、昔から使われてきたことには理由があります。外壁によく使われる(窯業系)サイディングに比べて、熱伝導率の高い木材の外壁は外部の熱を伝えにくいので断熱にも効果的です。

50年以上もたせるつもりで家を建てるなら、自分で塗装ができたり部分ごとで張り替えができたりする木の外壁は、メンテナンスコストも抑えてくれる良質な建材です。

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軒をなるべく出す

「軒を出す」ことの重要性は、木に限ったことではありません。

外壁の種類がサイディングでも塗り壁でも木材でも、外壁は直接風雨にさらされて紫外線が当たることが劣化につながります。そして、いずれの素材も10年以内にメンテナンスが必要です。

特に木材で気をつけたいことは、水分を含むと腐りやすいので、軒の無い家や軒の届かないバルコニーの外壁などに使うと劣化が顕著になるということです。

木材に限らないことですが、外壁の保護には外壁に強固な素材を使うよりも、軒を出すことで風雨を防ぐことができ外壁の劣化を遅らせることができます。

外壁に向いている木を使う

ウエスタンレッドシダー北米からの輸入材で実績が多い・経年変化でシルバーグレーになる
イベなどのハードウッド水に沈むほど重く耐候性が高い・ウッドデッキなどにも使われる
スギ日本の気候風土に合う・塗装仕上げ以外に焼杉加工も耐久性が良い
カラマツ成熟した材が出回ることが多い・着色性が高い
ヒノキスギ同様に昔から使われている・おりスギよりも木目がおとなしい

スギやヒノキなど日本の材は、赤身(幹の中心部に近い)材を使った方が白太(樹皮に近い)材よりも防腐効果は高く長持ちします。

横に張るのか、縦に張るのか、張り方によってもデザイン性はずいぶんと変わります。実(さね)と呼ばれる木の接合部の加工の種類や、木材自体の幅や形によってバリエーションのある自然な美しさが楽しめます。

また、熱帯で育ったイペなどのハードウッドを除いては、木の表面はインテリアに使われる様なスベスベに加工されたものは耐候性が落ちます。

いずれも手触りがザラザラで、目が粗くケバだった表面加工のものの方が耐候性は高く、塗料もよく浸透させることで耐久性も出てきます。

木と相性の良い塗料を選ぶ

木の外壁を選ぶ人の中には素材の色や木目を長く楽しみたいと望まれる人もいて、塗装や着色をしないケースがあります。木が朽ちていって自然な色になればいい、と考える人です。

しかし、少しでも素材を長持ちさせたい、木が風化してグレーや黒っぽくなることを望まない人には塗装をすることをおすすめします。

木部に使われる塗料は大別すると3種類。中でも「半造膜塗料」が木との相性がとても良く長持ちさせます。

造膜塗料塗りつぶすことで木目は消えるが防水性があり塗膜が強いペンキ
含浸塗料塗料を木に浸透させて木目をきれいに見せる
半造膜塗料半分浸透して半分被膜を張るイメージで木の呼吸性を妨げない

ホームセンターにも様々な塗料が並びますが、いちばん大事なことは「木との相性」です。

木は伐採した後も水分を含み呼吸をしている、生きている(動きのある)素材です。

ペンキは木の素材感をなくしてしまいますが、防水・防汚の機能が高いものです。しかし、ペンキの塗膜は一部が破損しただけでも、そこから一気に水分を含んで膨らんだり木が内部から腐ってしまったりしてしまい、塗り直す作業も大変です。

直射日光が当たらず雨が当たらない様な屋根のある外部だと、木の素材感を楽しめる浸透塗料がオススメです。

塗膜がないので木目はきれいに映えますが、外壁では撥水効果が弱まるのが早く、色が薄ければ薄いほど紫外線の影響を受けやすいので、2〜3年も経たないうちにの塗り替えが必要になることが多いです。

半造膜塗料は日本製のものよりも、後述する木材利用が見直されているヨーロッパで進化しました。木の動きを止めないことで割れなどを防ぎ、素地の隠ぺい力を高めることで表面強度を保っています。

木を傷める主な要因である紫外線を防ぐには濃い色が有効なので、色選びを迷う時には濃い方を選択することをオススメします。

信州カラマツのT&Tパネルを使う

わが家は既製品の木製サイディングである、信州カラマツのT&Tパネルを使いました。

カラマツは日本でも数少ない落葉針葉樹(冬を乗り越えるために葉を落とす)の1つです。葉まで水分や養分を回す必要がないので、腐りにくく木目の細かいのが特徴で、これまでは材のねじれなどがあり、建築材としての扱いが難しいとされてきた木材でもあります。

カラマツは成熟した材の流通量が豊富で、加工と施工次第ではっきりとした美しい木目を楽しむことができます。

信州カラマツにドイツ・リボス社の自然塗料を工場で塗装したT&Tパネルがあり、半造膜塗料のグリーンを選択しました。ブルーグレーが人気らしくとても雰囲気も良かったのですが、自然の材料から作られた他にはない発色のグリーンが気に入っています。

メンテナンスに関しては、塗料が自然塗料なので匂いや安全性を気にせず自分でも上塗りできます。メンテナンスも傷んだところだけ2枚のパネルを外すだけで、簡単に交換ができるというのも大きな魅力です。

同じ木材に同じ加工をするだけで再現できてしまう、とてもエコロジーで合理的な素材です。木に合った塗料を塗ることで、木の寿命も伸ばしていくことができます。

ヨーロッパでも見直される木材の外壁

日本では歴史を100年も遡らなくても、スギ材などを外部に張って漆喰を塗る家が多かったのですが。

家づくりの近代化の過程で石油化学系の素材が普及し、木や土などを手入れして長持ちさせるよりも、簡単に低コストで新しいものに変えることが選択されてきました。

昔からの建築は石やレンガが主体であったヨーロッパでは2000年前後より、意匠性だけでなく持続可能な素材として木材の魅力や価値が見直されています。その動きは「ウッドルネッサンス」と呼ばれ、大型施設でも木造建築や木材で仕上げられることが珍しくなくなりました。

21世紀に入ってから、そのヨーロッパで日本の建築家がコンペを勝ち取るのも、木造や木の使い方をよく知っている部分が大きいのでしょう。実は日本の大学で木造建築について学ぶカリキュラムや授業はほとんどない!?、という現状も反面持ち合わせているのですが。

よく外部に木材を使うドイツの建築家たちに手入れのことを聞いても、「どんどんグレーになっていい感じだろ?」「2、30年はもつかな?」「木材だからゴミにならないし、簡単に張り替えられてエコロジーな素材だ。」という感覚の答えが返ってきます。

木を多用する建築業者は、経年変化でシルバーやグレーっぽく木が変色していくことを見越して使っています。最初から木に薄いグレー系の自然塗料を塗って経年変化を感じさせにくくしたり、木の変化を楽しんでいずれ張り替えることも視野に入れ、無塗装で仕上げることもあります。

適材を選ぶことも大事ですが、その前に軒を出して外壁が水にさらされ続けることがないよう、木が腐ったりカビたりしない設計をする必要があります。そして、木は朽ちるものだと理解し、朽ちるのがイヤであれば適切な塗料で定期的にメンテナンスを施します。

より良いのは、木の特性を理解した建築業者で建てることでしょう。

わが家も今ではすっかり自然のグリーン色が周りの環境にも溶け込んで、とても落ち着いた外観を作り出し、夜に街灯を点けるととてもあたたかい光に包まれます。

木の外壁は適切な設計や仕上げ、塗装によるメンテナンスや部分的な張り替えをするだけで、自然な姿で数十年は使えるとてもエコロジーな素材なのです。

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