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自宅をリフォームするにあたって、漠然としたイメージしかなく、どの様な点を特に気を付ければ良いのでしょうか?
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現在のご自宅の健康性を簡易診断できるサイトがあるので、建築業者を検討する前に、自分で課題を整理するのはどうでしょうか。
リフォームも「健康」「省エネ」がおすすめ
既に自宅を所有している方も中古住宅を持ち家の選択肢で検討している方も、自然素材を用いた省エネ・断熱リフォームで、暮らしやすさや耐久性を優先することをおすすめします。
♢ 暑さや寒さに我慢せず、健康負担が少ない
♢ 冷暖房を効率良く行え、光熱費が下がる
♢ 結露やカビを気にせず、家の耐久性も上がる
♢ 気密性が高まることで、防音効果も得られる
デメリットにするのか悩ましいところですが、表面上のリフォームよりコストアップになります。
人生100年時代に、あと何年その家に住み続けるのかを考えて、コストも考えていかなければなりません。
建築業者を検討する前に今の自宅の課題を自分で把握して、優先事項をきっちり決めておきましょう。
今回は、現在の居住環境の中の健康に関する問題点を具体化してくれる、CASBEE健康チェックリスト(一般社団法人日本サステナブル建築協会)の紹介です。
リフォームや住み替えなどを検討している方に、必要な住まい方の改善や改修にはどこに重点を置くかなどを提示してくれます。
住宅の専門的な知識は必要ありません。住まいと健康に関わる50の質問に答えていくだけで簡易診断してくれ、自宅と全国の6,000軒以上の調査結果の平均値を比較することもできます。年季の入ったチェックリストではありますが、インテリアやデザイン以外に何が大事なのかを見つけやすいものになります。
CASBEEの簡易診断結果で分かること
CASBEE健康チェックリストの50の質問に答えるだけで、自宅の①部屋別・②健康要素別の健康特性が、レーダーチャートで示されます。
また、全国平均の100軒と比較したランキングも出てくるので、客観的に自分の家を見つめることもできます。
同じ住まいに住む人によっても回答結果が変わる可能性はあるので、別々にチェックしてみてはいかがでしょうか?
自分では意識していなかった課題が、出てくるかもしれません。
暖かさ・涼しさ
部屋の寒さ・暑さはヒートショックや熱中症の様な健康被害に直結し、空調などで多くの電力を消費し家計の負担にもなります。
窓などの開口部の断熱性を高めて、居室とそうでない部屋の過度な温度差をつくらない様に、配慮する必要があります。
静かさ
省エネ・断熱リフォームのメリットには、静かさを手に入れることができるということもあります。
安眠などの健康面での効果はもちろん、外から入ってくる音だけでなく、近隣を気にせずに音楽や映画を楽しむこともできます。
断熱強化以外にも熱の出入りと同様に音も窓から出入りしやすいので、気密の高いサッシで温熱環境+静かな環境づくりをおすすめします。既存の窓に内窓を付けることも効果的です。
明るさ
目は人間にとってカメラの役割を果たしているだけではなく、視神経は光の刺激を他の感覚と補い合い、身体の働きを調整しています。
明るすぎる照明は疲れ目の原因などになり、光の色によっても影響を受けやすいです。
冬場の家庭では、暖房に次ぐ消費電力が照明です。
均一な明るさだけでなく、素材と組み合わせた適切な照明計画と開口部の確保を行いましょう。
清潔さ
浴室やキッチンなどの水回り以外に、クローゼットや居室に結露やカビが見られる場合は、リフォームを待たずして改善したいところです。
カビは感染症、アレルギー、中毒などの健康被害を引き起こし、体内に取り込まれると、場合によっては命の危険に陥ることもあります。
ドイツやスイスは日本よりも湿度は低いですが、冬は日本よりも気温が下がり、風通しの悪い既存の古い建物を改修して住むことが多く、カビへの関心はとても高いです。
サッシそのものを変えられない場合は、内窓の検討などをしてみても良いかもしれません。
安全
室内の段差や、床などの滑り、門扉やシャッターなどの開閉で危険を感じる、といった点がこの健康チェックリストでは「安全」に該当する項目です。
さらに室内環境においては、内装の仕上げ建材が健康に影響することも考慮した方が良いでしょう。
日本では2003年に建築基準法が改正され、シックハウスの原因になるホルムアルデヒドの規制値が制定され、建材の安全性は上がりました。
しかし、いまだに工事後のにおいや体調不良に悩まされる話を聞きます。
特にアトピーやアレルギー疾患を持つ家族がいる場合には、ホームページやカタログだけでなく、可能な限り実物のサンプルも取り寄せましょう。
安心
防犯や外からの視線などが、「安心」に該当する項目です。
何か設備やセキュリティーを付けることで得られる安心もありますが、付けないことで得られる安心もあります。
例えば、2階への侵入を容易にさせる足場となるカーポートや柵、視線が気になり侵入されやすい掃き出し窓などがあれば、改善項目になります。
省エネ・断熱リフォームの先のこと
欧米では家の価値を維持するために家のメンテナンスを繰り返しますが、日本では不動産価値が土地にしか置かれていないため、積極的に省エネ・断熱リフォームをする割合が低いのが現状です。
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2019年に行ったドイツやスイスの建築視察では、2050年までに化石燃料から再生エネルギーへの転換を行うために、建築分野の役割負担は大きいとされている、という話が繰り返されました。
日本も同じ課題を抱えており、解決には新築より数の多い既存住宅で、断熱・省エネリフォームを順次行なっていく必要があります。
省エネ・断熱リフォームで健康の不安を失くし、長く住める家にすることで自分で資産を守り続けることも重要ですが、未来に残すエネルギー問題のことも頭の片隅において欲しい現実です。
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