木製サッシはコストが高くて、なかなか採用に踏み切れない…。
よく分かります!私も家づくりの際には家族に理解してもらうために、外せないものの一つとして木製サッシの重要性を説きました。
サッシ(窓)の役割って、なに?
サッシ(窓)の種類によって家の室内での快適さ(体感温度)、光熱費が変わります。私の家づくりでの優先順位は、1番か2番くらいに「木製サッシ」がありました。
サッシの性能が良いということは、室内の温度調整や結露などの防止に有効なだけではありません。締めきってピアノを弾いたり人を招いて多少にぎやかにしてもご近所に気兼ねしないですみ、外の交通などの喧騒も家に入ってきにくい防音性などの魅力もあります。
サッシ(窓)の種類
アルミサッシ | 先進国の中で日本だけ、一般的によく使うアルミ枠のサッシ。 |
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樹脂サッシ | アルミサッシより断熱性が高い。先進国の新築では一般的に採用。 |
木製サッシ | 上記2種類の素材よりも熱伝導率が低い。省エネ住宅では必須。 |
先進国では省エネだけでなく、家の中の温度調整をする健康対策としても開口部(=窓)は重要であると位置付けられています。事実としてアメリカでは、防火の観点からもアルミサッシの使用を禁止している州が24州以上あったりします。
残念ながら日本では窓の基準に限らず、住宅の最低限の省エネ基準自体を決めかねている状況なのですが。韓国や中国でも窓の断熱機能に最低基準を設けて、粗悪な窓が市場に出回らないようになっています。
ここで詳細までは触れませんが、室内の温熱環境はエネルギー消費以外にも、そこに暮らす人の健康にも大きな影響を与えるため、国としては医療費の増大に繋がるような項目だと捉えているのです。
それぞれのサッシのコストは断熱性能と比例します。枠の種類は?ガラスはどんなものが何枚使われているのか?どうやって作られているのか?コストの高いものほど、良いパフォーマンスが期待できるものとなるので、オーナーにとってはここが迷いどころです。
木製サッシ
ではここで、本題の木製サッシのメリットとデメリットを見てみましょう。
機能性=「健康・省エネ」
家における窓やドアなどの開口部の重要性は、近年特に注目されるようになってきたので、ネットやYouTubeでいろいろな情報を入手することができます。
日本での従来のような窓一枚でのアルミサッシは、断熱性能はあまり期待できません。前述の通りアルミサッシの使われていない他の先進国では主に樹脂サッシが普及しています。開口部からは熱が出入りしやすいので、室内温度が外部の影響を受けにくいよう、窓にも適度な気密や断熱を備える必要があるためです。
熱伝導率が高い順番でサッシの種類を並べると、アルミサッシ>樹脂サッシ>木製サッシになります。
「熱伝導率が高い=熱を伝えやすい(失いやすい)」ということです。
例えば、輸入の木製サッシによく使われるパイン材はアルミニウム合金に比べて、熱伝導率は約1300分の1です。樹脂サッシでも、アルミサッシの約1000分の1になります。
熱伝導率が低いサッシを使ったり、アルミサッシでも開口部に工夫(外部で日差しを遮る、内窓を付けるなど)を工夫して、省エネで快適な室内温度に近付けたいものです。
あまり考えたくないことですが、アルミサッシは火災の時に変形する恐れが高く、バックドラフト現象にもつながりやすいので、世界の主要都市ではほとんど使われていません。ただ、資源が少ない日本では原産国であるオーストラリアとの関係が良好で、アルミ市場は高度経済成長期に一気に成長しました。
そういった背景で安価なアルミサッシに対して、木製サッシは需要が少ないため、国産メーカーが少なく輸入品で検討することがほとんどなのが現状です。
木製サッシの機能性の中で最大の要素は、まさしく『省エネ=健康』です。気密や断熱が効いていない住宅では、室内が暑かったり寒かったりしがちで、エアコンや暖房器具をフル稼働させないといけません。
化石燃料に頼る資源や地球温暖化などの環境問題が背景にあり、そして住環境においてはエネルギー消費効率(=光熱費)を大きく左右する「窓」。先進国の中でも「窓」の性能基準に関しては、日本はとりわけ低いと言わざるをえません。
欧米では窓は健康に関わることとして、国や州ごとで最低室温を18〜21℃の間に法律で定めています。
スイスやドイツではその法律によって使うサッシや断熱性能のレベルが確保され、また新築や改修にあたってエネルギー基準が設けられています。さらに気になる方は、断熱性能などの基準や素材による性能の違いはもっと詳しいサイトがいっぱいありますので「窓の性能基準」などで検索をかけてみて下さい。
デザイン
外壁に木製サイディングやスイス漆喰を使うこと、室内も無垢と自然素材で仕上げるということを先に決めていました。だからこそ木製サッシの塗り壁に合う、見た目のデザインも外せない要素でした。
外側については色々な着色を楽しみ4色塗りましたが、内側は塗ろうと思いながらそのまま月日が過ぎて無塗装のまま。ただの無頓着ではあったのですが、結果的に内側が木そのものの色であることでインテリアにとても馴染んでいます。
外側に関しては紫外線や風雨にさらされ木そのものを傷めてしまうので、無塗装やクリア塗装などの着色をしていないものは厳禁です。濃い色であればあるほど、紫外線には強くなります。
耐久性
木製サッシはペア(複層)ガラスかトリプル(3層)ガラスがほとんどで、ガラス層とアルゴンガスなどのガス層で作られており、断熱性能も長続きします。
ヨーロッパでもしっかりメンテナンスさえすれば一般的なメーカーは最低30年以上、100年の耐久性を目安にしているメーカーもあります。
しかし、木枠の部分はアルミなどよりも風雨の影響を受けやすく、金具などは磨耗していきますので、メンテナンスは定期的に行わなければなりません。
木部の塗装に関しては、地域や家の造り・取り付け位置によっても変わってきます。耐候性を考えると、紫外線に弱い薄い着色は避けた方が長持ちします。また、自分で塗り続けるにも簡単で耐候性があるので、亜麻仁油が主成分のリボス自然塗料のタヤのような半造膜タイプの塗料がオススメです。
ちなみに、横すべり窓を使っています。拭き掃除の際は180度回転させることができますが、力がそれなりに必要です。
防音
わが家は家を建てるまでも頻繁に音楽を聞き、友達を招くことが定期的にあり、ピアノやギターなどの楽器もあります。また家の前の道路は歩行者も車も行き来がそれなりにあり、日中の交通量も少なくない立地です。
採用した窓には約30dBの基本遮音性能があり、木製サッシのおかげで音に関しては本当にストレスがありません。他に目立った防音対策はしていませんが、2階の真ん中の部屋でピアノを弾いていてもほとんど外には聞こえないレベルです。
防犯
メリットはきりがないので、あと1つだけ挙げておくと「防犯」も大きいです。トリプルガラスだと厚みからして一目で分かり、なかなか泥棒さんもガラスを割るのに時間がかかりそうです。
ストッパーを開放しなければ、換気をしていても外から侵入できるほどの隙間は開きません。
木製サッシの家に住んで
1日の室温の差が少ない
実際に住み始めて、いちいち「これは窓の効果だ!」と認識するわけではありませんが、ふと気付いた時に家での過ごしやすさを実感することがあります。窓は断熱材(工法)とも深く関連性があるのですが、わが家は断熱に関しては一般的なレベルにあります。
マンション暮らしの時より使用頻度は少なく、エアコンはすぐ効くので効率的です。
毎月の光熱費は、窓の種類でも確実に変わってきます。自然素材の建材に関しては体感で伝わることが多いですが、窓に関してはかなり明確に素材の違いが数値に表れます。
自然素材である木製サッシが新建材(歴史の浅い建材)であるアルミサッシと比較して、明らかに気密と断熱が取れています。熱伝導率が低く減音効果があるという点は、サッシメーカー各社の資料を参考にされると良いでしょう。
木製サッシの網戸や目隠しについて
ちなみに、木製サッシには網戸は付けていません。網戸に関してはコンパクトになる折り畳み式の網戸もありますが、視界をすっきりさせたいので今のところ付けていません。
夏の蚊と湿気の多い時期の虫除け対策が必要ですが、アースノーマットで対応しています。カーテンはなく、ロールスクリーンも当初は3ヶ所のみだったところ、夏の暑さを軽減するために遮光スクリーン南側は付けるようになりました。
あまり窓は開けなくなる
近年の厳しくなる一方の夏の暑さは、繰り返しテレビや自治体などでも注意を呼びかけています。住み始めた時が夏だったのですが、仕事から帰ると20時前でもとても室内に熱気がこもっていた日が続きました。「断熱はそこまで完璧にはしてないから、木製サッシでもこんなものなのかな?」と思っていました。しかし実際は、父が風が通れば良いと思い自分たちが居ない日中に2階を開け放して、夕方に閉めてくれていたのです。
気密や断熱が良い家は、熱の出入りが少ないので暑い夏に窓を開けることをあまりしません。窓を開けて熱を取り込んでからエネルギーを使ってエアコンを稼働させるより、24時間エアコンを付けている方がエネルギー消費の増減が少なく電気代も安く済むからです。
自然な眺めを絵にする額縁みたい
それぞれの部屋の窓の取付位置に関してはもちろんプラン後も、設置する日まで設計事務所が何度かチェックをしていました。都度チェックしていても、設計中〜建築中に近隣の家が建つなどの他、自然環境も含めて周囲の環境の変化があります。
わが家の立地は住宅地なので三方は家に囲まれていますし、建て始めて初めて気付くこともあります。何ヶ所かは実際に取り付ける段階で、周辺の緑がよく見える角度や位置に調整をしました。
近隣の家が極端な建て替えを行わない限り、守られる眺めになるでしょう。それはひとえに設計事務所のプロの仕事ならでは、だと思います。
その眺めは1つ1つ木の額縁に入ったみたいなさりげない絵になり、その考えは聞いてはいましたがここまでとは思いませんでした。全部の窓からというわけではありませんが、春には新緑、秋には紅葉、夏や冬には青空のワンシーンがとてもきれいに見ることができます。
これがアルミサッシだったらちょっと違った風景になっていたかも、というのは極端でしょうか?自己責任でお風呂にも木製サッシを使い、水掛かりなど多少気は遣いながらも小さな庭の景色を楽しんでいます。
額縁の歴史が長いヨーロッパにおいて、額縁は「家具」という位置付けだそうです。
「自然素材の家を建てたい」という思いから始まったこの家づくりで、室内の無垢フローリングやスイス漆喰や他の自然素材の壁などの素材、他の家具などのインテリアとの調和がとれたのは「木製サッシとそこから見える眺めならでは」だと実感しています。
採用を迷う人がいれば、他の予算を削ってでも最後まで守り通してもらいたい仕様。
それが、木製サッシです。